映画のクライマックス、登場人物の気持ちに重ね合わせて思わず涙が頬を伝う。大好きな人との別れや、感動的な瞬間に胸がいっぱいになって涙があふれる――。
私たちにとって涙とは、ごく自然で当たり前の現象ですよね。でも、その涙を「宇宙空間」で流したらどうなるのでしょうか?
今回はちょっと視点を変えて、「涙が宇宙でどうなるのか?」を一緒に想像してみましょう。
そもそも、涙ってなんだろう?
涙は単に悲しいときだけ流れるものではありません。感動したとき、あくびをしたとき、目にゴミが入ったとき――私たちはさまざまな理由で涙を流します。
地球上で涙を流すとき、自然と頬をつたってポトリと落ちるのが当たり前。でもそれは、地球の引力(重力)があるからこそです。では、重力がほぼない宇宙だと、涙は一体どんな姿を見せるのでしょう?
宇宙の涙は、ゼリーのように「ふわふわ」浮かぶ?
宇宙空間は、無重力(微小重力)環境です。ここでは上下という概念がありません。ということは、地球で落ちるはずの涙も「どこにも落ちない」という不思議な状況になります。
無重力空間で涙が頬にとどまる不思議な現象を描いたリアルな宇宙イラスト
宇宙で泣いてみると、目の周りに涙がじわっと溜まり、ぷるんとした水の塊のように膨らみます。まるでゼリーや透明なスライムを目の上に乗せたみたいに、ゆったり浮かぶのです。地球では経験できない、ちょっと奇妙で不思議な姿ですね。

「流れない涙」のちょっと困ったところ
涙が流れないという状況を想像してみましょう。もし目に何か小さなゴミが入ったとしても、そのゴミを涙が洗い流してくれません。宇宙空間では涙は目の表面にとどまったまま、ゴミと一緒に浮遊するばかりなのです。
そのため、宇宙飛行士たちはときどきとても困った状態になります。涙が目の周りに広がりすぎると視界を遮り、最悪の場合、息苦しささえ感じてしまいます。私たちが地球ではまったく気にしない「涙」という存在も、宇宙ではちょっとした問題になるんですね。
じゃあ宇宙飛行士はどうやって涙を処理するの?
宇宙飛行士は、悲しいことや嬉しいことがあっても簡単には泣けません。なぜなら、宇宙ステーションの中では涙は拭き取るまでずっと顔に貼りついているからです。
そんな宇宙飛行士が涙を流した場合、特別な方法を使います。それは、とてもシンプルな方法で、「タオルでそっと吸い取る」ことです。
ただし、宇宙では軽く拭く程度では涙は消えません。吸水性の高いタオルを目元にしっかり押し当て、涙をすばやく吸収しなければなりません。涙を吸い取ったタオルも、宇宙ではふわりと漂いますので、飛ばないようにしっかりと掴んでおくことが大切です。
でも、宇宙服を着て宇宙空間に出ているときは…?
ここまで紹介したのは宇宙船や宇宙ステーション内での話ですが、実は宇宙服を着て船外作業(スペースウォーク)をしているときは、もっと大変です。
船外活動中は、ヘルメットをかぶり宇宙服の中にいるため、涙が出ても手で拭くことも、タオルやティッシュを使うこともできません。涙や汗は目の周りにまとわりついたまま、流れ落ちることも蒸発することもありません。唯一できるのは、まばたきをしたり、目を動かして涙を目の隅に集めることくらい。実は、ヘルメット内には「鼻かきパッド」と呼ばれるスポンジ状の小さなパッドがあり、鼻のかゆみ対策として使われますが、涙を拭くのはなかなか難しいのです。
「宇宙空間で船外活動を行う若い男性宇宙飛行士。宇宙服の透明なヘルメットの内側には、丸い涙や汗の水滴がいくつも付着しており、困った表情をしている。背景には地球と星空が広がっている。
こうしたトラブルを防ぐために、NASAなどの宇宙機関では、宇宙飛行士の目の健康状態やアレルギー体質を事前にしっかり管理しています。万が一、涙や異物で目が見えなくなる、強い不快感が出るなどのトラブルが起きた場合には、安全第一で作業を中断し、船内に戻ることがルールになっています。

宇宙で涙を流す日はいつか来る?
近い未来、宇宙旅行が私たちの暮らしに身近になれば、宇宙で涙を流す人もきっと増えるはず。もしかすると、宇宙空間で「泣くための特別なハンカチ」や「涙を吸収する宇宙用グッズ」が登場するかもしれません。
その時になったら、ぜひあなたもこの話を思い出して、「宇宙での涙対策」を忘れないようにしてくださいね!

近未来の宇宙ホテルの一室で、女性宇宙飛行士が専用のハンカチやグッズで涙を拭いている。明るく清潔な室内、窓の外には地球や宇宙が見える。
地球の常識が通用しない宇宙だからこそ、普段は気づかない小さな現象にも目を向けてみると、驚きと発見がいっぱいです。宇宙の話題には、まだまだ面白い「なぜ?」が隠れています。
次回もぜひ、あなたの好奇心をくすぐる宇宙の不思議を一緒に紐解いていきましょう!

